牧陽一の日記です。

埼玉大学 人文社会科学研究科 牧陽一の授業内容です。表紙は沢野ひとしさんの中国語スタンプです。

チンポム展とダミアン・ハースト桜観に行く

昨日は東京芸大の院生王さんとチンポム展(森美術館)とダミアンハースト桜(新美術館)を観に行った。

まずチンポム展。広島のピカッの書き順や渋谷のカラス系の映像が面白かった。

メンバーのエリィさんが安倍夫妻が来場した時に解説し、記念撮影したことや、(4月24日)美術展へのエリィさんの夫の会社からの協賛金を、森美術館が断った件で、チンポムはChim↑Pom from Smappa!Groupと会社名を入れたグループ名に変えた。(27日)など「お騒がせ」が続いている。

www.fashionsnap.com

2022年4月24日 

中にはチンポムはただのお騒がせグループでアーティストではない、という人もいる。

だがわたしは、森美術館がチンポムの美術展をやることから疑問だったし、やればこうした衝突もあるだろうと思っていた。上流階級金持ちの高尚さを見せつけるための美術館の本性が出たところで、それに対する彼らの態度を示しただけだろう。安倍夫妻というもっとも忌み嫌われるハイソサエティの代表を登場させたのも、そうしたものへの反駁と捉えられる。

こうしたハイソの偽善、(好いことしてるという)精神的な安逸のための展覧会という匂いがぷんぷんする場所、そこを根底からひっくり返す。まさにいかがわしくワルであるチンポムがここで飼い慣らされるわけがないと思う。

こうした矛盾は映画「ザ・スクエア」にも描かれていたではないか。

www.transformer.co.jp

だからソーシャリー・エンゲージド・アートというものもハイソの上から目線を拒否しなければいけない。その気持ち悪さは会田誠も言っていたではないか?

eiga.com

チンポムはその気持ち悪さを、安倍夫妻との記念撮影という形に落とし込んだと言っていい。つまりスマッパやチンポムが「いかがわしい」というなら、最もいかがわしいハイソである安倍夫妻はどうなんだ?という疑問を投げかけたのだろう。

安倍晋三と写真をとったからと、チンポムはただのお騒がせグループと見做して切って捨てるような表面的左翼など眼中にない。それはアートの独立にもかかわってくる。

チンポム1

チンポム2

チンポム3

さてダミアンハースト桜については

もしも日本だから桜って思っているなら、ちょっと安易すぎる。 坂口安吾桜の森の満開の下梶井基次郎桜の樹の下には死体が埋まっている)先日亡くなった金芝河(たかが朝鮮野郎の血を引いて咲いたサクラの花じゃないか)といったイメージの解体を意図したのならべつだが。これって観衆をバカにした駄作っていうことでいいんじゃないだろうか? でもそこまで稚拙であることを考えているとすればキッチュだな。というようなものを書いた。

Fさんからは「大昔の西洋視線を見せつけられているような」と意見をもらったが、Hさんからは

「私は欧米から見た日本が「虚無」とか、(世界系)アニメのイデオロギーの無さ、とかゼンとか、、空っぽなイメージをもし持たれてるとしたら、この桜の絵の空っぽさを見た時になんとも言えない気分になりました。(日本ってこんな風に何も考えてない風に見られてるのかなぁ、、って。)」

とご返事をいただいた。

確かにただの駄作と切り捨てるのではなく、内省的に思考する必要があるのかと思った。でもこれは読み過ぎの感があり、読解を助けるためにも誰かがもっと発言すべきだと思っている。

ダミアンハースト桜