牧陽一の日記です。

埼玉大学 人文社会科学研究科 牧陽一の授業内容です。表紙は沢野ひとしさんの中国語スタンプです。

「アートなんかいらない!」

3月8日、以前から気になっていた「アートなんかいらない!」を三鷹天命反転住宅へ観に行ってきた。

三鷹天命反転住宅

カタカナの「アート」とひらがなの「あーと」。ひらがなの方は都築響一的視点なのだと思う。様々な事象の中にアート的な情熱や固執を見出す行為や記録だろう。それはアートは自由であり、寛容であるということに結びつく。縄文土器を見れば確かに、以降のアートなどいらないと感じるのは、大いに共感できる。火炎式土器の造形美は、煮炊きの機能とは無関係だろうが、実際に使用された生活道具である。生活そのものがアートであるという理想をも叶えている。それは1万年前の先住民の文化であり、おそらくは渡来人の文化である「日本」文化からはかけ離れたものである。そして縄文時代からは見れば、つい最近のシステムである天皇制をも排除することができる。しかし問題は、「現在の現実」ということだ。それは大浦信行「遠近を抱えて」がいまだに問題視されることにも表れている。

あーとの部類のラブドールはいずれAIを搭載して、「人が求める人」の境界を揺さぶることだろう。今は多少他人の眼というものが意識される。中国の山村でラブドールと住んでいる男の話を読んだことがある。

hbol.jp

ラブドールと共同生活する仙人を許容する村人、そうした寛容は中国の方が目立つと思う。そうしたことは以前書いたことがある。

さらにこの映画がわたしに喚起させるのはマイノリティの身体である。

三鷹天命反転住宅をつくった荒川修作は以下のように述べている。

 夏の終わり、私がファッションをやっているという話を彼にしたときのことを思い出す。彼は眼を輝かせてこう言った。「ファッション!? それはいい。僕はね、障害者のための服を作ろうと思ってたんだぞ。いいかね、君。腕がない人のための凄い服を作るんだ。するとどうなる……? 腕がある人がその服を見たら、みんな俺も腕がなくなりたいと言い出すんだぞ!」。

freemagazine.jp

ここでわたしがまず想起したのは、マシューバーニー「クレマスター3」のガラスの義足だった。

そしてもう一つはある時ふと、仕事をしながら世界で一番美しい靴は何だろう?と考えたことがあった。真っ先に頭に浮かんだのがアメリカの作家マシュー・バーニーの「Cremaster 3」に出てくるAmy Mullinsが履いていた「ガラスの義足」と呼ばれているポリウレタン製の義足だった。

princessleg.com

さらに大浦信行監督「靖国・地霊・天皇」2014の金満里の舞踊である。

障碍者の障碍そのものを美へと、表現の力へと転嫁する。それは健常者の美を遥かに超えていく。

全身を黄色く塗ったパフォーマンスで知られるシンガポール出身のLEE Wen 李文(1957-2019)はパーキンソン病にむしばまれ、変形していく自らの身体を私たちに見せてくれた。(「現場の力」2016年1月7日、中野テンプシコール)いのちの最後の輝きを、生涯をかけて取り組んできたパフォーマンスアートに昇華した。

www.studioterpsichore.com

アートは身体から機能を引き算した残りにこそ存在する。それはマイノリティの生であり、欠如、脆弱そのものである。わたしはそれをアートとみなす。

二つの闇と収容所の記憶 ニキータ・カダン、アイ・ウェイウェイ、ジェナ・マービン

2025年、1月26日、名古屋大学での「戦時における身体メディア芸術の力」シンポジウムでの「ウクライナ現代アート 戦時の芸術表現 鴻野わか菜早稲田大学)」への牧陽一

コメントをきっかけに思考したことを述べておきたい。

鴻野わか菜さんの最近の著作に『生きのびるためのアート―現代ロシア美術』五柳書院2024がある。

ニキータ・カダンは「戦争を歴史の中へと追いやり」、現在の生活すべてを戦争に侵食させることを阻止しようとする。  

2022年2022.4.6ロンドン・ナショナル・ギャラリーが所蔵する印象派の画家、エドガー・ドガの《ロシアの踊り子たち》(1899頃)が、今回のロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受けて《ウクライナの踊り子たち》に改名された。

bijutsutecho.com

 ニキータ・カダンは「ドガの作品やその部分を自由に描き直すにあたって、私は、子供の頃に描いていたような「戦争を歴史化する」芸術の力、すなわち、戦争をプロパガンダに毒されていない歴史的な語りとして物語り、戦争を過去のものとして捉え、現在も続いている戦争を歴史的事実とみなすことによって、戦争から明日を守ろうとする芸術の力「爆発」を描き入れました。クレヨンを紙から離さずに描いたらせん状の線の集まりとして。こうして、ウクライナの《ロシアの踊り子たち》は、まるで砲撃の中にいるかのように踊り続けるのです。」と述べている。

artfront.co.jp

エドガー・ドガ ウクライナの踊り子たち 1899頃  The National Gallery London

ニキータ・カダン《The Dancers and Explosions/ダンサーと爆発》2024(部分)15枚組、紙に木炭

エドガー・ドガ ウクライナの踊り子たち 1899頃  The National Gallery London

ニキータ・カダン《The Dancers and Explosions/ダンサーと爆発》2024(部分)15枚組、紙に木炭

 

右上の黒い穴、暗闇、それはアイ・ウェイウェイの最近の作品にも共通している。

艾未未氏、65万個のレゴブロックでモネの「睡蓮」を再現

2023.05.09 Tue posted at 08:35 JST

「デザインミュージアムのプレスリリースによると、暗い色のレゴブロックで描かれた部分は、1960年代に艾氏が父と亡命生活を送っていた地下壕(ごう)への扉を表しているという。」下放されていた新疆ウイグル自治区の地下壕の住居である。

www.cnn.co.jp

艾未未「睡蓮#1」2023 /Ela Bialkowska/OKNO studio 

作家は名作をそのまま引用するのではなく、自己の心的障害を合わせていく。それは払拭できないトラウマであり、現在の状況がそうさせるのだ。アイ・ウェイウェイも画面の右側を黒くするしかない。現在の茫漠とした不安が、過去を呼び戻させるのだ。

2014 クリミア併合 香港雨傘運動 モスクワと香港、自由を求めるパフォーマンスアートによる表現が最も直接的な表現として採用されていったのはこのブログでも書いている。

mushou.hatenablog.com

mushou.hatenablog.com

http://file:///C:/Users/Maki%20Yoichi/Downloads/KY-AA12017560-5901-09%20(2).pdf

 

2023年 Gena Marvin ジェナ・マービンのパフォーマンスが注目される。ジェナは、マガダン出身である。マガダンにはスターリンによる粛清、ダリストロイ(特務機関極北地方建設総局)によって強制収容所がつくられた。ここから金鉱山コルイマ鉱山へ強制労働に行かされたのである。強制収容所、「恐怖と服従のDNA」がジェナの家族には植え付けられた。アイ・ウェイウェイの睡蓮の黒い穴もまた父艾青への批判、下放と共に住まわされた収容所に等しい。こうした恐怖と服従の記憶が両者に、そしていまのニキータ・カダンを結び付けているのではないだろうか?

 

加えて、ジェナはパフォーマンス表現者として反戦を訴えることと、トランスジェンダーとして、社会からの差別の視線を受けるという二重の生きづらさを抱え込んでいる。ジェナは自分らしく生きたい/寄り添ってくれる人が欲しいと願う。

 

 これは世代のギャップであるばかりか、専制政治の特色をも示している。性的マイノリティへの差別に抵抗することは、反戦と別ものではない。トランプ政権が最初に行った性的マイノリティ、トランスジェンダー排除、習近平政権が行った美少年アイドルへの押し活の禁止など。集団から個へ、専制への新世代の抵抗が示されてもいる。

 

専制は兵士を理想とするマッチョな身体を求める。 

ジェナ01

ジェナ02



 

 

高氏兄弟の続編を書いていた

久しぶりに日記を書く。高氏兄弟のことを考えると、ほかのことができなくなる。本当の意味での解決というのはいつまで待ってもやってくるはずはない。それは政治権力の横暴であり、文化の歴史ではない。自分のできる事を進めるだけだ。中国現代アートを研究してきたわたしが高氏兄弟のことを書かないのならば、わたしには中国現代アートを研究する資格はない。

 

昨年2024年末にシンポジウム出席を引き受けて、ひと月半、2025年1月26-7、名古屋大学TCSシンポジウム「戦時における身体メディア芸術の力―興隆・淘汰の歴史と現状」に参加した。最終の授業の一週間前だった。その後、25年の11,12月、名古屋大学JunCtureの原稿を書き、締めきり数日前に書き終えた。ほぼ1万3千字。

この間、日記を書くことが無かった。25年3月定年退職、その後の手続き、本の移転に忙殺された。

2025年の3月31日まで、仕事があり、送別会は4月に入ってからだった。ありがとう。

埼玉大学。本の整理と処分は2025年9まで続き、大方は寄贈、処分された。整理には学生院生の方々が手伝ってくれた。感謝している。中国現代アート関係の重要な書籍類は国立新美術館の伊村靖子さんに頼んで、情報資料室に寄贈図書として置いて頂くことにした。目録製作ための費用の一部として、50万円寄贈した。26年3月には、目録が完成するとのことである。埼玉大学へは中国、台湾、香港など中華圏へ留学する学生の費用として1人10万円、10人分100万円を寄附した。これは先に定年退職した権純哲先生の韓国留学費用寄附を踏襲した。書籍の保存、留学への補助は、わたしどもの未来への希望だ。どんな時代でも中国、韓国、東アジア文化に関心を維持し、継続していけるように。

 

2024年10月以来日記を書いていないので、その後のことを書きます。

2024年11月3日には中国現代文学研究者懇話会「中国文学研究会を今日どう見るか」

東京大学駒場14号館)に参加した。飯塚容「中国文学研究会」の印象―戦後復興期を中心に 

飯塚朗、飯塚容父子は中国文学研究の奇跡だと思った。飯塚容さんには話劇人社の活動、曹禺研究でずっとお世話になってきた。まだ院生だったわたしを早くから見出してくれた。それは瀬戸宏さんも同様だ。でもわたしは中国演劇研究から離れていってしまった。

飯塚さんは「いい時代に研究させてもらった。」と言っていたが、わたしもそう思う。今日の中国との関係悪化や文化統制の状況など考えられない事だった。自由で表現に輝きがあった。でもわたしどもは、諦めるわけにはいかない。

この後「高氏兄弟―臨界から」を書き始め、12月1日に送付している。

 

2025年2月13日には椿組「キネマの大地―さよならなんて、僕は言わない」(新宿シアタートップス)を観る。脚本演出は鄭義信

満洲映画協会の物語。日本と中国映画人の友情を描いている。確かに「それ」はあったと思う。だが日本は満洲を「理想的な国家」に作り上げて、末にはヨーロッパやアメリカに転売、あるいは欧米からの融資を募っていたのだから、五族協和など嘘に決まっている。まさに売国奴なのだ。友情さえもカネに転化させようとしたのだ。そこを突いてほしかった。演劇と歴史研究は別物だろう。しかしわたしどもは裏切りというものを直視しなければいけない。

25年10月13日には国立新美術館「時代のプリズム」展を観ている。忘れられない作品に再会することができた。やはり「反戦」という普遍的テーマを持つ作品には力がある。

アキーレ・ボニート・オリーヴァ(Achille Bonito Oliva)高氏兄弟、艾未未2010

 

高氏兄弟 高兟を釈放せよ Free Gao Zhen!

高氏兄弟 高兟1956- 高強1962-は中国を代表するアーティスト。

高氏兄弟の兄、高兟は2024年8月27日、彼の家族は北京の東、河北省三河市公安局から英雄殉教者の名誉を侵害した疑いで拘留通知を受けた。子供の進学のために戸籍などの手続き資料を取るための帰国だった。容疑の作品は、高氏兄弟「高兟+高強」が何年も前に制作した「キリストを銃殺する」2009「跪いて懺悔する毛沢東」2009「ミス・マオ」2006などの彫刻作品である。現在、彼の妻と子供は関与が疑われ、出国できない状態にある。高氏兄弟の兄の高兟は1956年生まれ、弟の高強は1962年生まれで、ともに山東省済南市出身。高氏兄弟は中国の改革開放期に登場した最も有名な中国人芸術家の一人であり、彼らの確固とした政治姿勢は作品にその痕跡を残している。高家毛沢東が始めた文化大革命で没落した。父親は山東省沿岸部の省都済南の出身で、済南消防器械工廠の職員だった。父は文化大革命中の1968年に迫害を受けて死亡した。当時、高氏兄弟はそれぞれ6歳と12歳だった。高の父親が亡くなって25日後、母親と6人の子どもたちは父親のいわゆる「自殺」を知った。彼らはずっとそのことに疑問を抱いていた。その後、高一家は中央政府にこの不当行為に抗議するため北京にやってきた。10数年の陳情の結果、彼らが受け取ったのはわずか3000元余りの補償だけだった。1985年以来、高氏兄弟は協力して絵画、インスタレーション、パフォーマンス、写真などの芸術活動に携わってきた。特に、彼らの彫刻や絵画は敏感な政治問題を扱うことが多い。しかし、高氏兄弟は自分たちを反体制派だとは考えておらず、芸術活動の過程で社会に対する意見を表現しただけであり、それが現在の中国の体制に触れることもある。 1989年2月、北京で美術展に参加していた兄弟は、方励之の鄧小平宛の公開書簡に署名した。そのため、彼らは反体制派とみなされ、当局に取り締まられた。1989年から2003年まで海外渡航を禁止され、2004年まで解除されなかった。また劉暁波08憲章にも署名している。近年、習近平政権は国内の反体制派や知識人の言論統制を継続的に強化している。2018年4月、全国人民代表大会常務委員会は、英雄や烈士の名前、肖像、名誉などの事実を侮辱し、誹謗中傷する市民に責任を負わせることを目的とした「英雄烈士擁護法」を可決し、5月1日に施行された。高兟はこの罪で逮捕された。

 

高氏兄弟

たとえ作品が法に触れていたとしても、法律が過去までさかのぼって適用される筈はない。法令不遡及の原則である。

 これは原則に違反する逮捕拘留である。こんなでたらめが、まかり通るならば、如何なる表現もできなくなる。毛沢東文革を全肯定する政権の横暴によって、アーティストは委縮し、中国文化は地に落ちることになるだろう。またこうした動きは周辺諸国にも当然影響する。政権は独裁を強化するために、反体制的なアーティストを意図的に逮捕できることになる。

 私たちは彼らの作品から、侵略戦争の統帥者が懺悔する姿を容易に想像できる。作品のテーマは単にマオの懺悔ではなく、普遍的な平和への希求を示している。

跪いて懺悔する毛沢東2009



Gao Shen: The elder brother of the Gao brothers. On August 27, 2024, his family received a detention notice from the Sanhe City Public Security Bureau on suspicion of violating the honor of heroes and martyrs. The suspected works are sculptures such as "The Shooting of Christ", "Miss Mao Series", and "Mao Kneeling in Repentance" created by the Gao brothers "Gao Shen + Gao Qiang" many years ago. Currently, his wife and children are implicated and unable to leave the country. Gao brothers, elder brother Gao Shen was born in 1956, younger brother Gao Qiang was born in 1962, both are from Jinan, Shandong. The Gao brothers are among the most famous Chinese artists to emerge during China's reform and opening up period, and their staunch political stance has left its mark on their work. The Gao family was wiped out during the Cultural Revolution launched by Mao Zedong. Their father was from Jinan, the capital of coastal Shandong Province. He was persecuted to death in 1968 at the height of the Cultural Revolution. The two brothers were only 6 and 12 years old respectively at the time. It was 25 days after Gao's father died that his mother and six children learned of his father's so-called "suicide". They have always expressed doubts about it. Later, the Gao family came to Beijing to protest this injustice to the central government. In the end, all they received was a paltry compensation. Since 1985, the Gao brothers have collaborated together and engaged in artistic activities such as painting, installation, performance, and photography. In particular, their sculptures and paintings often involve sensitive political issues. But the Gao brothers never considered themselves dissidents, but merely expressed their views on society in the process of engaging in art, which may touch upon the current Chinese system. In February 1989, while participating in an art exhibition in Beijing, the Gao brothers accidentally signed Fang Lizhi's open letter to Deng Xiaoping. As a result, they were regarded as dissidents and were controlled by the authorities. They were banned from traveling abroad from 1989 to 2003 and were not lifted until 2004. In recent years, the Xi Jinping administration has continuously strengthened its control over the speech of domestic dissidents and public intellectuals. In April 2018, the Standing Committee of the National People's Congress passed the Law on the Protection of Heroes and Martyrs, which aims to hold citizens accountable for insulting and slandering the names, portraits, reputations and other facts of heroes and martyrs, and it came into effect on May 1. Gao Shen was arrested for this crime.

キリストを銃殺する2009

artnewsjapan.com

坂井洋史「低徊の愉楽」 

3月4日、8日は会議 

 その後3:00から埼玉近美で井口壽乃先生最終講義 ハンガリーアヴァンギャルド、モホイ・ナジ(1895-1949) バウハウス 生命中心主義、トーマス・ヘンリー・ハクスリー ネオ・ダーヴィニズム この問題は坂元ひろ子先生の天演論翻訳にも関わるが、中国では優生思想に傾いている。それは近代中国の被侵略という状況がそうさせたのだろう。

 そのまま北浦和から東京、タクシーで竹橋の如水会館

 5:00から坂元ひろ子先生を偲ぶ会。

『中国近代の思想文化史』(岩波新書)では女性史を随時取り込んでいる。先生は日常でも女性ばかりではなく、様々な差別に対して、弱い人を助けるのは人として当然のこと、として取り組んできた。遺作となる『厳復:天演論』(岩波文庫)近日刊行予定、では現在まで至る優生思想を如何に捉えていくのか、考える契機となるだろう。近代中国思想研究への貢献ははかり知れない。

 12、13日は入試業務

16日、14:00からは一橋大学の佐野書院で、坂井洋史先生の最終講義「低徊の愉楽-文学史的思考とは何か」。中国古典文学から近代文学へと詞人詩人随筆研究の点が線に結ばれ、面を構成し、行きつ戻りつしながら、やがて兪平伯へと集約していく。

 先生は日本の中国文学研究の最も誠実で、最も優れた学者だ。3時間に及ぶ授業だったが、一時も厭くことはなかった。坂井洋史先生の底力というか、軽妙にして重厚な時間だった。「兪平伯雑記(其四)」『九葉読詩会』9号の遊離と独在の概念にも感銘した。

 それにしても自分には学問が足りない。というか無い。今更仕方のないことだが・・今回は本物の学者に触れたと感じた。ありがとうございました。

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失感情 

授業は1月中に修了したが、後期分の採点成績、来年度のシラバス入力、入試業務のほか、2月は11日間、別の仕事があった。結構忙しく、今頃やっと日記を書くことができた。

 

卒論の発表は13日、私の指導した男4人組は、まずまずの内容の卒論ができた。ねそべり族、中国におけるキリスト教弾圧、民国時期の女性像、民国時期のスポーツ。

修論は主査ひとり、副査二人。ティックトックの模範的人物像、日本のドラマの中国での受容、民国時期の女性画家。

博士論文副査。これは講評が出るので、内容には触れないが、戦中から毛沢東時代の書誌学的なもので、出版の詳細だけの記述で、核心に触れていかないものだった。

 

最近ずっとモヤモヤしている。何の遠慮もないはずの、中国人留学生が、自己検閲しているようなスッキリしない論文を書いている。若い人が正直に生きられない。実に悲しい時代になっている。そういう学生に自由に書けと言えない。覚悟しろとも言えない。あるべき姿は見えているけど、強制はできない。核心に触れない無難なもの、生ぬるいものが出てくる。こうして独裁は、自由を奪い文化を破壊していくのか?このまま中国の若い人は感情を抑えていくのだろうか。

 

妻、阪本ちづみの納骨は7回忌を過ぎた昨年やっと済ませた。西日暮里の青雲寺に眠っている。その後、役目が終わったかのように2匹の猫は死んでいった。とても寒い日と、とても暑い日だった。娘猫は丸い猫ベッドのかたちのまま丸く硬くなっていた。母猫はよく入ってきた風呂場で子に撫でられながら朝方に亡くなった。わたしは泣かなかった。

韓国のソン・ウォンピョン『アーモンド』の主人公ユンジュのように、わたしも感情が失われているのだろうか?あるいはこれももう少し生き残るための心の防衛本能なのか?

アーモンド

 

 

2023年度後期まとめ日記

月曜1限中国語1~5回目、理香と王麗 話す中国語1の15~22課。6~最終回、理香と王麗 話す中国語2の本文、全て。特に補語を中心に

月曜3限中国近現代文化研究法 梶谷懐『日本と中国「脱近代」の誘惑―アジア的なるものを再考する』太田出版 各節の分担を決めて、発表する。

水曜2限 中国近現代文化論 1~5回目、大学院生の発表。6~11回、中国現代アート、星星画会、85美術運動、ポスト89ポリティカル・ポップアート、シニカル・リアリズム、チャイナ・キッチュ、北京東村パフォーマンスアート、死体派Sun Yuan & Peng Yu、12~15回、比較研究、北京、上海、広州、香港 など

20231218武蔵台

水曜3限 中国近現代文化特殊講義2 日中映画論 姜文「太陽の少年」、張楊胡同のひまわり」、大島渚愛のコリーダ」「戦場のメリークリスマス」「儀式」「新宿泥棒日記」、翰光「亡命」、塚本晋也「野火」、北野武HANABI」、賈樟柯「罪の手ざわり」、張藝謀「紅いコーリャン」、池谷薫「延安の娘」「蟻の兵隊

水曜4限 中国近現代文化演習 1~8回、堀江義人『毛沢東が神棚から下りる日』平凡社、9~15回『中国のプロパガンダ芸術』岩波書店

陳美彤Chan Mei Tungと香港パフォーマンスアート

木曜1限 日本アジア文化論 11回「不在」と東アジア現代アート 

12回 マルセルデュシャンアイ・ウェイウェイ、そして中国現代アート

合計 77回

講演:

ジェニファー・アイゼンフェルド(デューク大学美術史学科)「ガスマスク国家:戦時中の国民防空、飛行、日本の空を覆う想像力」2023年11月3日(木)13:00~15:00教養学部22番(世話人:加藤有希子)

李琴峰「死と再生の旅路:李琴峰の小説創作」2023年11月6日(月)13:00~14:30教養学部31番(世話人:鮮于媚ソヌミ)

両講演ともすごくいい勉強になった。面白かった。