牧陽一の日記です。

埼玉大学 人文社会科学研究科 牧陽一の授業内容です。表紙は沢野ひとしさんの中国語スタンプです。

艾未未アイウェイウェイ「平安楽清」

艾未未「平安楽清」がユーチューブにアップされている。
英語版、中国語版もある。この作品は浙江省温州楽清市で起きた銭雲会交通事故死を調査したものだ。エンディングには左小祖咒の「私の息子は銭雲会という(我的儿子叫钱云会)」が使われている。この歌を歌う老人は「不慮の交通事故」で亡くなった銭雲会の父親銭順南である。「不慮の交通事故」で亡くなった銭雲会の父親銭順南は「偉大な共産党万歳、私に替わって息子の敵を討ってくれ、…楽清市は村民鎮圧を発動した、…私の息子は市政府、鎮の人に、殺人犯に謀殺された…」と歌っている。浙江省内の温州楽清市内の農村で二〇一〇年一二月二五日、蒲岐鎮寨橋村元村長の銭雲会(五三歳)が大型トラックの下敷きになって死亡した。銭雲会は村の土地一四六ヘクタールが官僚によって不正に奪われた事を政府上級に訴えていたところだった。インターネットでは「銭さんは殺された」との見方が多く表明され、地元住民からも警察側見解と矛盾する新証言が出はじめたが、結局事故死として処理された 。―つまり官僚の汚職を追及していた元村長が殺害された可能性がある。左小祖咒は、庶民の中でこうした事が「有り得る」と感じさせる「不正が蔓延った社会」を告発している。
実際に銭雲会事件に類似した事件が二〇一一年にも発生している。
湖南省娄底新化県佛光村支部書記游济安(遊済安)の溺死事件である。村長の息子游飞(遊飛)によると、父親は長年県当局の強制土地収用に対し、村民と共に抗争してきた。六月八日、再度県当局に陳情に行ったまま、行方不明になった。五日後、村から一〇〇キロ以上離れた資江で遺体となって発見された。 娘の遊珍娟によると、鎮長や鎮の共産党書記から、一〇万元の遺体安置費と住宅の提供を条件に、遺体の火葬を求められた。つまり鎮長側は証拠の隠滅を図っている。游済安もまた村の土地の不正収用と移転問題で県委員会と対立している。娘の游珍娟は父の死体の外傷から他殺の容疑を訴えたが、溺死として処理された。
不可思議な事故が多発している。真相は一体全体どこにあるのか。両方とも証拠隠滅を図っている限り、殺人の可能性の方が高い。中国の警察が権力とつるんでいる事実が明らかだ。だからますます中国政府の国際的な信用は失墜する。抜本的に変わるしかない。