牧陽一の日記です。

埼玉大学 人文社会科学研究科 牧陽一の授業内容です。表紙は沢野ひとしさんの中国語スタンプです。

The Chinese Lives of Uli Sigg 22年度前期の授業のまとめ

水曜は2限中国近現代文化論受講者は30人ぐらい 艾未未について途中「アイ・ウェイウェイは謝らない」を上映しつつ、少年期から星星画会、ニューヨーク時代、帰国後、北京東村、Fuck off 展の死体派、鳥の巣スタジアム、四川大地震調査、殴打事件、逮捕拘留、作品分析、2015パスポート奪回。Human flow  Coronation  Cockroach 。半世紀以上の内容。父艾青と合わせて1930年代以降の歴史も反映させる。大学院と学部の共通授業で、留学生の院生が多い。彼らは中国の本当の歴史、大躍進反右派闘争、文革、北京の春、64天安門事件、現在の香港の弾圧を教えてもらっていない。四川大地震の手抜き建築で亡くなった小学生たちの世代だ。だからこそこの授業は外せない。現代中国文化を扱う授業では、艾未未が世界で最も良い教材だ。

3限は特殊講義(日中映画論)。大島渚北野武塚本晋也、陈凯歌,张艺谋,贾樟柯,監督作品をそれぞれ観て、レポートしてもらった。今回はこれに加えて、池谷薫監督「蟻の兵隊」「延安の娘」今後この2作は外せない。最後はスラヴォイジジェクの「倒錯的イデオロギーガイド2」。哲学的、精神分析学的方法による映画解読の可能性を示した。

4限は演習、岩波世界人名事典で取り上げた作家、艾未未,黄锐,徐冰,吕胜中,隋建国,蔡国强,张培力,耿建翌(2017年 去世),王广义,方力钧,岳敏君,荣荣,马六明,赵半狄,林天苗,尹秀珍,邱志杰,宋冬 について紹介しつつ解説した。耿建翌が亡くなったのは実に残念だった。シニカル・リアリズムの最初だったと思う。王广义の作品の鉄の労働者に粟粒を付けたのはボイスのフェルトや油に匹敵するわけのわからない拘泥だったというのは面白い。邱志杰の南京長江大橋計画も面白い。Socially Engaged Art 検討のために映画「スクエア」を観た。「社会にとっていいことをすることで上層階級に精神的な安逸を与える」アートには、微妙なずれが生じる。アートのもつ抵抗の力が喪失していく。中国では、中国共産党プロパガンダが介在していくのではないかと、考えている。

最後はUli Sigg について、コレクションを香港のM➕美術館に寄贈したこと。さらに: The Chinese Lives of Uli Siggを観て、ウリ・シグのコレクション、麻将MAHJIONG について検討した。これは新しい試み。中国現代アート史のまとめになった。

月曜の1限中国語、今回は皆優れていて、テストの必要はなかった。1-16課まで修了した。板書をほとんどしなかったので、最後は大復習大会、書き取りの練習をした。

2限は博士課程の北村君の授業だったが、時々研究の進展を見せてもらい、あとは大学向かいのビープラで、ほかの院生と食事というコース。

3限は概説で今年も「中国現代文化14講」を使った。特に台湾、香港、華人社会、民族を重視した。映画は毎回使ったが、上記では「悲情城市」「恋する惑星」「亡命」「ルンタ」を取り上げた。今後も後半に力点を置く方がいいと考えた。

以上が22年度前期授業のまとめです。最後の日は終に痛風の発作が訪れ、応急のバファリンをのんで、足を引きずって大学へ行った。頭はボ~っとしていたが、癖になりそう。翌日は医者に診てもらった。さて来週の月曜日は卒論演習。

Uli Sigg