牧陽一の日記です。

埼玉大学 人文社会科学研究科 牧陽一の授業内容です。表紙は沢野ひとしさんの中国語スタンプです。

月曜7週目

1限中国語 今日のお菓子ははドライフルーツでした。次回のリクエストはクッキーとブラックサンダー。第2課が終わって、3課の本文を読みました。宿題は2課の復習と
第2課答.pdf 直 3課の総合練習の三と四の問題です。
2限大学院修士(麻生晴一郎先生講演の復習、これで3コマもやりました。4倍になりました。ありがとうございます。)反日の意味、日本人が中国問題を語る意味。
空き時間は授業準備、印刷などです。
4限概説 麻生先生アンケートへの答え「アイ・ウェイウェイは謝らない」(今月末DVD発売)前半 写真はアイ・ウェイウェイとズオシャオズージョウ ― 場所: 埼玉大学

アンケートを読んで(麻生晴一郎)
全体の印象として、しっかり聴いてくださったことに感謝いたします。
特に次の3つの意見を多く目にしたことはうれしかったです。
(1) 中国人はマナーが悪いわけではない
(2) 中国でも圧政に対し意見をする庶民が出ていることに注目したい。その中でアイウェイウェイはヒーローだと思う。
(3) 中国人ほど日本人は行動力がないので将来の日本が不安。

(1)について、質問に「なぜ日本でこういう面は紹介されないのか」というのがありましたが、10年前まではこういう面での中国紹介は書籍や雑誌などでよくありました。最近こういうことが知られなくなったのは批判的スタンスの中国論に問題があるのではなく、中国のよい面を紹介するニュースが激減したことに注目すべきだと思います。

(2)については積極的に支援したいという意見もあり、心強かったです。

(3) について、日本は制度・法律などで中国よりも格段に自由・市民社会化された国ですが、人々の自由や民主を求める気持ちは中国よりはもちろん、欧米など多くの外国よりも弱いと思います。何もなければ全く問題ないのですが、東日本地震原発の問題があった時など、立ち上がる力がないのが課題だと思います。

以下は他の意見・質問に対する意見です。
(1)なぜ中国の市民活動が反日に結びつくのか?
反日デモに参加する人たちが持つ正義感とは「悪い日本に中国の指導者はいいようにやられている。国家の主権である公民の私たちが、政府の代わりに(もしくは政府と手を取り合って)立ち上がって、堂々と日本に対して権利を主張しよう、というものです。これが暴力など歪な形になったのはひとえにデモが未熟であるからで、根本のロジックとしては市民意識国民意識が強くなったからこそ反日が出てきたわけです。最近の若い中国人が海外の中国報道に反発するのも自分が中国を背負って外国と向き合っているような意識があるからだと思います。

(2)農村ではなぜ次々と子供を欲しがるのか?
老後のためです。一般に「都市の人は社会福祉がお年寄りの面倒をみて、農村の人は子供がお年寄りの面倒をみる」と考えられています。ただし欲しいのは主に男の子です。

(3)一党独裁は中国のやり方として仕方がないのではないのか、その批判を日本から関与しても何も変わらないのではないか。
一党独裁が中国に見合ったやり方かどうかはわかりません。少なくとも日本が戦争で侵略してなければ中国は国民党の政権が続き、今ごろ日本以上の民主社会になっていたかもしれません。しかも日本は80年代以降、内政に全く関与しない経済援助で中国共産党政権を支援した最大の貢献国ですし、ここまでの経済成長があったからこそ今の体制は強固になったのですから、中国の伝統に見合った一党独裁政権と言うよりも、中国と日本の戦中・戦後の歴史が作り上げた政権と言ってもいいほどなのです。
また、現実にこの政権に批判をする人が欧米的な発想からも社会主義毛沢東主義的な発想からも大勢いて、その中で日本人に支援を求めてくる人がいる場合、それを無視し、代わりに政府べったりの日本の対中外交に血税を払うのは中国ではなく、中国の中の現政権だけを支援していることにすぎません。変わるか変わらないかはともかく、何に共感し支援をするかということはただお上に任せていいとは考えません。

(4)なぜ中国でばかり反日デモが起きるのか?
反日デモが最近になって起き始めたのが中国ではありますが、反日デモ自体は東南アジアなどでかつてたびたび起きていました。反日デモがそれらのデモと比べて激しいデモなのかどうかは何とも言えないと思います。少なくともぼくの知る限り、中国の反日デモでは日本人の死者・瀕死の重傷者は出ていません。死者を出した先日のベトナムでの反中デモがベトナムと関わる中国の人にとっていかにショックかがうかがわれます。



予定
6月9日 博士課程 宮本真左美さん
7月7日 古畑康雄先生講演

ふるはたやすお/1966年東京都生まれ。共同通信社国際局デスク(中国語ニュース担当)。東京大学文学部(中国語中国文学)卒業後、同社入社。2001年、中国語ニュースサイト「共同網」を立ち上げ、現在も編集を担当。中国のメディア研究や執筆に取り組む。東方書店HP web東方に「微観中国」連載中。著書に「網民」の反乱 ネットは中国を変えるか?  勉誠出版など。