西村賢太の小説「暗渠の宿」を読んでいたら、解説が友川カズキだった。やっぱり今頃この作家を読みだした理由はこのあたりなのだ。すっかり重なっていて、運命的なものさえ感じる。友川カズキのCDはほとんど聞いている。実は学生のころからのファンでもう30年になる。最初のライブは1980年ごろ、堀の埋め立てで退去させられる飯田橋近くの材木屋だった。そのころ「頭脳警察」の石塚俊明さんもピップエレキバンドで参加していた。彼岸の永劫を引き寄せるようなパーカッションに酔いしれた、どこかへ行ってしまいそうな音。友川さんのギターの弦が切れてなくなるまで弾く凄まじいライブは忘れられない。その後結構ライブにはいって、いっしょに飲んだこともあった。友川さんには「まきー、田舎もん!」と呼ばれていた。石塚さんには「道具運びをやれ」と誘ってもらったこともあった。結局表現者としてあちら側へ行けるようなそんな度胸も能力もなかった。
小説の貧乏で醜くて汚くて卑劣なダメ人間、それでも何かにしがみつくような生き方、でもそこには共感を感じる。誰もがそうだ。「宝くじを買ってる老人の背骨」も「小銭をかぞえている男の横顔」も「ある種のおどつく懸命さがある」30年前に友川さんの音楽に出会い、今度は西村賢太の小説に出会えたのは非常に幸運なことだ。
- 作者: 西村賢太
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2010/01/28
- メディア: 文庫
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