牧陽一の日記です。

埼玉大学 人文社会科学研究科 牧陽一の授業内容です。表紙は沢野ひとしさんの中国語スタンプです。

スラヴォイ・ジジェクとエミール・クストリッツァに救われる

コロナ蟄居の中で、2021年は訃報が続いた。信州大学の恩師、松岡俊裕先生。30年前私を埼玉大学に採用してくれた先輩、小谷一郎先生。私の義母、叔父、甥。感謝の気持ちは、尽きず、日々思い出している。だがまだその気持ちを伝えられない。

エミール・クストリッツァの「ジプシーのとき」「アンダーグラウンド」など大方の作品を観た。人間の愛を伝えきれない不器用さやイデオロギーに翻弄される弱さが、作品に溢れ、それでも土臭く生きのびてゆく、強かさを教えてくれた。

スラヴォイ・ジジェクの思想は、日常に隠されたイデオロギーの存在を確認させる。また社会主義実験が失敗し続けても、それでも繰り返して挑戦する意志の重要さを教えてくれた。

さて22年度も始まって2週を経た。私の伝えたいことはうまく伝わっているだろうか。前期は月曜、中国語、博士課程相談、中国近現代文化概説。水曜は文化論(アイ・ウェイウェイ)、特殊講義(日中映画論)、演習(中国現代アート)6コマ。また今年度は5名の卒業論文と2名の修士論文の指導もある。

昨日今日と「セデック・バレ」太陽旗、虹の橋を観た。映像としての霧社事件が力強く描かれていた。概説の授業で使う予定。

アートコレクターズ2022年4月号に

有識者が選ぶ 今注目すべき劇薬アーティスト
 牧 陽一/櫛野展正/高橋律子

◇寄稿 牧 陽一 孫原&彭禹 ─ダミアン・ハーストから死体派へ

を書いた。これはわたしの学生の林さんが、授業で私の見せた中国の「死体派」の作品に対して「こんなものはアートではありません、アートとは真善美です。」と言われたときから、その回答をずっと考えてきた結果である。1年以上引っかかっていた。学生の質問や意見はありがたいものだ。

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