不安で空虚なままに妻の死から2年9か月が過ぎた。1年ぐらいは呆然と過ごし、いよいよ遺稿集をまとめはじめ、3月に出版できた。宮尾先生はじめ皆様の協力に感謝している。彼女の文を何度も読んでいくうちに、多少は虚無感も薄れてはきたが、悔いは残るままだ。この日々は近くにいた息子や学生のみんなに支えられていた。生活し授業をする限りは自分にできる範囲で頑張るしかなかったからだ。この3年は論文も書けず、かろうじてアートイットに翻訳を載せる程度だったが、それでもやることで多少は現役感もあって教壇に立てたと思う。
そして5月に同僚がケガで入院して代講したが、これも仕事が増えて疲労することで、気持ちが落ちていく事を止められた。
何とかして少しでも自分に決着をつけ、大学の人間して誰かのためになるようなことをしたいと、4,5年前から計画していたシンポジウムと特別講義を実行した。池谷薫監督「蟻の兵隊」をめぐって とパルコキノシタ「震災と私 命を描く」。どちらも戦争、震災と個人に対してどう考えるかを示し得るものとして、是非学生の皆さんに見ていただき、考えてほしかった問題だ。
こうして誰かとかかわりを持つことで、私の心は少しずつ回復に向かっているように思う。
感謝している。また心でそっと応援してくれている方々にも。