牧陽一の日記です。

埼玉大学 人文社会科学研究科 牧陽一の授業内容です。表紙は沢野ひとしさんの中国語スタンプです。

艾未未「オルドス100」を見てきた

昨夜は横浜美術館レクチャーホールでの「イメージフォーラムフェスティバル2012」、艾未未の「秩序を乱す」2009(78分)(これは「老妈蹄花」)と「オルドス100」2012(鄂尔多斯100)を見てきた。「老妈蹄花」は何度も見たが、字幕付きでじっくり見ると、成都警察の非道さ、理不尽さに腹が立って仕方がなかった。本当に警察はマフィアそのものだ。ピラミッド型の下っ端、極権主義実行犯が警察だ。全てが権力に癒着したこのシステムを突き崩さないとだめだ。極権主義という怪物は中国共産党が60数年かけて作り上げた世界最強の凄まじい集中権力で、左や右の政治を通り越している。また日本の戦争責任とか歴史的な問題とも次元が違う。表面は近代的に取繕っているが、中身は原始的な暴力主義の個人集中権力である。この世界にこの集中権力を誕生させた責任は中国のみならず、世界中の人間にある。どうやってこの極権主義を瓦解させるかがこれからの世界の課題だ。艾未未は一番底辺の実行犯を相手にするという体を張った行動で、このシステムの問題を私たちに提示している。
「オルドス100」というのは砂漠に町を造り、世界から招いた100人の建築家にそれぞれ自由に1000平米の家を設計させるプロジェクト。「与えられた」自由にはけっこう戸惑うものなのだと思った。不動産屋の社長がなんか役者じみていた。結局このプロジェクトは頓挫したままだが、最後に「実行されていない」というテロップが入ると観客はみんな笑っていた。このフィルムの良さは建築家の考えを聞いて観客が思考することなのだろう。61分だったが退屈はしなかった。
 実行委員の方がステージから「艾未未読本」を持って紹介してくれた。ありがとうございます。本館では奈良美智展をやっている。横浜の汐風が心地よかった。